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日本サインデザイン協会 SDA出版委員会では映画の中のサインについてのエッセイを広く募集中。
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第19話 風が強く吹いている
子供が生まれてからというもの、映画を観ると言えば「アニメ・ヒーロー」ものだった。
下の息子が学齢期になり、家族全員で初めて観た邦画は「風が強く吹いている」。2時間を超える作品であったが、爽やかな青春ストーリーは子供たちを飽きさせることなく最後まで楽しませた。

致命的な故障でエリートランナーの道が断たれたハイジと、暴力事件を起こし陸上競技の場から遠ざかっていた天才ランナーのカケル、そして陸上初心者の8人が、無謀とも思える寛政大学「箱根駅伝」初出場を目指す。フツーの若者たちが走ることによって、自らの限界に挑み、仲間を信じ、夢の切符を手にした。新春の東海道箱根路を、さまざまな想いが込められた襷をつなぐために走る。走る意味と、各々が胸に抱える想いを重ね合わせた若者たちの汗と涙が、爽やかな感動を誘った。

この映画の見せ場は、何と言っても忠実に再現された箱根駅伝のレースそのものだろう。迫真の演技=走りを見せた俳優陣も然ることながら、練りに練られたレースシーンはスケールも大きく、実際の大会以上の迫力で映し出された。
リアリティを追求した映像は、寛政大学とともにレースを彩る架空のライバル大学の「ユニフォーム=サイン」であることに気付かせる。箱根の常連校を彷彿させる架空大学のカラーリングが、ロケの映像と実際の箱根駅伝の映像を繋ぎ合わせても矛盾することなく、自然な流れでレースの緊迫感を作り出していた。風景の中に散りばめられた架空大学ののぼりや横断幕のカラーに既視感を覚え、虚構と現実の世界の境界を失くしてしまう効果は、一重に「サイン」が担っている部分も大きかったように思う。

映画の余韻も醒めぬうちに、今年も箱根駅伝を迎えた。箱根路を沸かせた「山の神」に魅了されたことは記憶に新しい。図らずも、現実の大会も幾多の感動に溢れている。走るという単純なスポーツだからこそ、多くのドラマが込められている気がしてならない。




鈴木 一成(関東地区)




風が強く吹いている
原作:三浦しをん
監督・脚本:大森寿美男
主な出演者:小出恵介/林遣都ほか
公開年:2009年
# by sda-cinema-p | 2010-08-02 13:14 | essey
第18話 バグダッド カフェ
「バグダッド・カフェ」といえば給水タンク、給水タンクといえば「バグダッド・カフェ」を思い浮かべるくらい、パーシー・アドロン監督のこの作品で、給水タンクは見る者に「バグダッド・カフェ」のビジュアルイメージを植え付けた。

ところはアメリカ、ラスベガスに近いモハーベ砂漠。ハイウェイ沿いに一軒のカフェ(モーテル、ガソリンスタンドも兼業)がある。
その名は「バグダッド・カフェ」
ギスギスした黒人の女主人ブレンダはいつもイライラしている。周りの者があまりにもやる気がないからだ。
しかし、「バグダッド・カフェ」は成りたっている。砂漠の中で競合相手がないという理由で。
そんなさびれかけのカフェに、ある時謎のドイツ人が一人で荷物を引き引きやって来る。
彼女の名はジャスミン。アメリカを旅行中、夫と喧嘩したあげく、砂漠の中でひとりになった。物語はここから始まる。
ジャスミンは「バグダッド・カフェ」のモーテルに泊まり、やがて根が生えたように居着いてしまう。崩壊寸前の店を放ってはおけなかった、というより彼女はもともと勤勉なたちなので、自分の居所をキレイにしたかったのだ。
カフェの事務所を始め、そこいら中を掃除しまくる彼女だが、その最たるターゲットが敷地の中にある大きな給水タンクだ。ジャスミンは梯子までかけて給水タンクをモップで磨き上げる。
この印象的なシーンは映画のスチールとなり、また大ヒットした主題歌“Calling You”を含むサントラ盤アルバムのジャケットにもなっている。
話は逸れるが、このテーマ曲“Calling You”は映画よりずっとヒットした。砂漠の中、ゆらゆら立ちのぼるかげろうとともに流れるハーモニカのメロディーは、原題「遙かローゼンハイムを離れて」にぴったりと、郷愁を誘う。
そして、室内に漂う繊細なグノーのアベ・マリアのピアノもいい。良き映画に良い音楽は付きもの、とはこのことだろう。

第18話 バグダッド カフェ_f0218826_16415552.jpgところで、給水タンクだが、真っ青な空と対比するように黄色くペイントされ“BAGDAD CAFÉ”の大きな文字がアウトラインで描かれている。
この映画は砂漠を背景としているせいか、給水タンクに限らず、砂に転がるさまざまなモノがオブジェとしてチャーミングな効き味を出しているのだが、その中で一段と存在感のあるでっぷりした形のタンクは、まさに主人公ジャスミンのふくよかな姿と重なる。
よくよく映像を追っていくと、重要な場面の端々にタンクがおさまり、ただの小道具ではないことがわかるのだ。

「バグダッド・カフェ」における給水タンクとは何か?
カサカサに乾いた女主人ブレンダの心を癒し、風化しそうなカフェやそこに居座る住人の心を潤し、砂漠を行き来する退屈なドライバーたちの心を満たしたのは、ジャスミン、そして彼女の行動に他ならない。
給水タンクは、人々が渇望していたものの象徴であるとともに、それをもたらした「すばらしいドイツ人」を表す“サイン”なのであった。




宮崎 桂(関東地区)


バグダッド・カフェ
1987年 
西ドイツ映画
監督:パーシー・アドロン(ミュンヘン出身)
原題:Out of Rosenheim
アメリカ版、日本版の題名:BAGDAD CAFÉ

*ドイツ人監督パーシー・アドロンがつくった「バグダッド・カフェ」は、ドイツとアメリカという視点で見るとおもしろいです。たとえば・・・
・なぜ主人公ジャスミンはドイツ人なのか?きれい好きで勤勉なドイツ人がカフェを救った。
・それに比べアメリカ人はやる気がない。カフェの黒人女主人を始め役者崩れの絵描きや入れ墨師女 などのアメリカ人の人種と描き方。
・ギスギスの女主人とふくよかなジャスミンの対比。余裕が違うことを見せた。
・ドイツとアメリカのコーヒーの違い。
・アメリカのコーヒーマシーンはすぐ壊れるが、ドイツ製ポットはどこまでも優秀だ。
・グノーのアベ・マリアは、もとは偉大なドイツの作曲家バッハの平均率クラビア第1番である。
・ご当地ラスベガスのショーよりジャスミンのマジックショーの方が人気だ。あえてショービジネス の本場でドイツ人にマジックをさせた。
・ドイツ人は友情に厚く、人を裏切らない。(ジャスミンはバグダッド・カフェに戻ってきた)
などなど、おそらく「ジャスミン」という名前も「バグダッド」も何か隠された意味があると思います。
# by sda-cinema-p | 2010-07-22 16:49 | essey
第17話 トランスフォーマー リベンジ
映画の中のサインと言えば、ネオンサインでしょ。LEDも良いけれど西部劇での居酒屋や中華街でのネオンサインの醸し出す雰囲気は何とも言えないものがあります。 荒くれ者が一杯やってる背景にネオンサイン。最高の雰囲気ですね。 ネオンサインがセットに使われている映画は枚挙に暇はないのですが、最近観た「トランスフォーマー リベンジ」も作品冒頭の上海工場はメーキングによればペンシンバニア州ベスレヘムの今は使われていない工場なのですが、漢字表記のネオンサインが中国上海だなと思わせる役割を十分に果たしています。このサインが無ければ多分中国の工場だぞという設定も分からなくなってしまう。そういう映像効果がありますね。しかもネオン文字だから雰囲気もバッチリ。 ネオンサインに限らず、映画の中でのサインの役割は観る人が気づいてないけど、今観ている場所が何処だよという効果を担っているんですね。やはりサインの力はすごいです。



前田英幸(九州地区)



題名 TRANSFORMERS REVENGE OF THE FALLEN
製作年2009年 アメリカ
マイケル・ベイ監督 
# by sda-cinema-p | 2010-07-21 20:27 | essey
第16話 アンネの日記

中学生の時見た初恋映画である。その淡い気持ちと、特定の音に対して恐怖感を持った映画です。淡い気持ちとは、主演のミリー・パーキンスに対して。音に対しての恐怖感とはドイツ・ナチスの警察のサイレンです。
物語は、ドイツ第2次大戦下。ユダヤ人家族のアンネフランク家族は、ユダヤ人狩りから逃れてオランダ人の家の屋根裏に潜んでいた。物音ひとつたてられない生活にも慣れだし暮す日々だったが、いつも警察のサイレンの音がなると家族は緊張した。あるとき建物の下に警察の車がサイレンを鳴らし停車した。そして、密告により屋根裏を見つけられ強制収容所へ連行されていく。その静寂とサイレンの音が、恐怖になり、ドイツ映画でナチスのサイレン音がなるのが怖かった。音はきわめて個人の印象に左右される類例のひとつと思っている。
警察・救急車の音サインは、国により様々である。アメリカ映画の警察の音はアクション映画の影響か、期待感さえ感じられる音に聞こえる。日本では、伝統的に一音で、例えば鐘の音「ゴーン」、駅の発車ベルも以前は「ジーン」であった。救急車も「ウーン」であったが、近年「ピポピポ」となっている。
これを標準化すると、映画の個性がなくなるようにさえ感じる。警察・救急車のサイレン音でその国の音文化がわかるかもしれない。


山口 泰(関東地区)




アンネの日記
1959年製作
監督ジョージ・スティーヴンス
出演新人ミリー・パーキンス
# by sda-cinema-p | 2010-06-28 11:49 | essey
第15話 スターウォーズ エピソードⅣ
私が父に連れられて生まれて初めて映画館で観た作品は、ジョージ・ルーカス監督の「スターウォーズ エピソードⅣ」でした。スターウォーズは現在全6作品で完結しており、最初に公開されたものが原作で4番目のエピソード、以後エピソードⅤ、Ⅵと公開されました。時を経てストーリー展開が過去に遡り、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの製作が後になった理由は、特撮技術が近年になりようやくルーカス監督の思い描く世界を実現できるようになったからということで、監督が温めていた構想が永年かけて遂に実現した形です。

この映画の日本公開が1978年でしたから、私が小学1年生の時です。当時の映画館は今のように完全入れ替え制ではなく、途中で入館してそのまま次回の途中まで見るということが度々あったのを思い出します。館内もあまり快適とは言えず、音響が悪かったり、狭いうえに前の人の頭で字幕が読めなかったり、立ち見や通路に座り込んでの観賞も、人気映画では当たり前のことでした。しかし今でも記憶に残っている映画は、そういった不快な感覚を伴っている作品のほうがむしろ多いのが不思議です。現在のようにCGや音響がリアル過ぎる映画を快適な館内でくつろいで楽しむことは、かえって記憶に残らない娯楽と化しているのかもしれません。

話をスターウォーズに戻します。この映画、未来の宇宙戦争を描いた作品ですが、実はサインは一つも出てきません。ブレードランナーやBack to the Futureのように近?未来を舞台にした作品には、技術や文明の進化を見越して描かれた情景のなかにサインというものが必ず存在し、私たち業界関係者が注目するシーンが出てきます。私たちの世界では今も未来もサインは存在するものと思い込んでいますが、あまりにも果てしない未来の銀河系の彼方には、もしかしたらサインなど一切存在し得ない世界があるのかもしれません。この作品に唯一サインらしきものがあるとすれば、冒頭に流れるオープニングロールです。
宇宙の彼方に流れ去るあの字幕は、行進する軍隊、飛来する宇宙船を連想させる以外に、無限の宇宙空間において、まず観客にスケール感を与える役目を果たすサインのようにも私には見えるのです。



小野利器(関東地区)

第15話 スターウォーズ エピソードⅣ_f0218826_15315298.jpg
こんな感じのオープニングロールです。



作品;スターウォーズ エピソード4/新たなる希望
配給;20世紀フォックス 1977年公開
監督・脚本・製作総指揮;ジョージ・ルーカス
出演;マーク・ハミル、ハリソン・フォード、他

# by sda-cinema-p | 2010-06-23 15:34 | essey